このエントリは 釣り Advent Calendar 2017 の3日目です。
波動
液面より上には何も見えない海という巨大なブラックボックスに、釣り針を垂らせば魚が釣れるというマジカルな状況を見ると、それは無から有が生まれる奇跡のようであり、古来、人間は自然に畏怖と感謝を捧げてきたのだと思います。
私は欲深い人間です。その奇跡を一度でも味わってしまうと、その禁断の蜜に脳が侵され、もっと大物を!もっと大漁に!などといった、とめどない欲望が次から次へと湧いては溢れてしまう性 (サガ) があります。
未明に沖釣りへ行けば、サビキに連なるアジの入れ食い、私の細竿は三日月よりも鋭い弧を描いてしなり、生命の振動が手に伝わり、やがれそれは全身へと波打つように広がります。
Credit: Solomon_Barroa [CC0 1.0], via pixabay
川
私の実家は石川県能登地方の田舎で、家の側には川が流れていました。家から内湾の海までは2kmほどで、家の側の川は海水と淡水が混ざっています。
お世辞にも綺麗な川とは言えませんが、小さい頃は夏に川に入って遊んだりもしました。底質は砂泥で、モズクガニが川堤によくしがみついており、ほかにサヨリやクロダイが泳いでいるのを見かけたものです。
Credit: SEFSC Pascagoula Laboratory [CC BY 2.0], via Wikipedia
そのような環境でしたので、遊びで釣りをよくしました。チヌが釣れればご馳走なのですが、さすがにごく稀にしか釣れません。
私は幼い頃から欲深い人間でした。
「これは、釣りであろうか。沖釣りに比べれば、まるで穴のないドーナツのようなものではないか。」
有機物を豊富に含む汽水域に近い川水は生臭く、戸惑いの表情を浮かべる私に、クラムボンが川底から笑いながら話しかけてきました。
「瀬をはやみ、岩にせかるる、最上もが」
私の胸に、川釣りに対する肯定感のようなものが去来してきました。
コンバッチ。
よく釣れていた雑魚を紹介します
ウグイ
吉田兼好は、江戸期の文化に多大な影響を与えたとされる随筆、徒然草でこう述べています。「家の作りは、夏をむねとすべし」と。
私の中では、釣っても釣れなくてもまずはここから、という大メジャーな魚がウグイです。
吉田兼好の件は雰囲気で言っただけで関係ありません。
Credit: OpenCage [CC BY-SA 2.5], via Wikipedia
四万十川ほど清らかな川質に住むものであれば食べられるそうです。残念ながら私の家の側の川は水質が悪いので、地元の人間でウグイを食べるものはいませんでした (能登空港ができた影響で水質は更に悪化したらしいが真偽不明)。
大きなものは30cmに達します。引きは弱いですが、大型の個体であれば、それなりの手応えがあります。河口近くであれば海でも釣れます。堤防のそばでもよく釣れました (そっちのは小型が多かった)。
ヒイラギ
地元ではギンダイと読んでいましたが、正式にギンダイの名称を持つ魚はマナガツオと呼ばれる海水魚で、本種とは別の魚であることを、この記事を書くにあたって初めて知りました。
Credit: Show_ryu [CC BY-SA 3.0], via Wikipedia
体長は10cmほどです。体表にベトベトした粘液をまとっており、手が粘液とウロコだらけになるので、この魚が釣れたときは針外しが嫌だったのを覚えています。
食べれます。母は、おつゆ (味噌汁) に料理してくれていました。可食部は少ないものの白身の肉質で、針外しの嫌悪感とは裏腹になかなか美味です。
ハゼ
よく釣れれたのは、まだら模様のあるハゼでした。うーん…。おそらくマハゼだと思うのですが。
Credit: ふうけ [Public Domain], via Wikipedia
大きなものは20cmほどだったでしょうか。お腹に楕円形の腹ビレがあるのが特徴です。目がクリクリしててかわいいやつです。
ヒイラギと同じく、おつゆにして食べていました。淡白な味ですが、決して不味くはありませんでした。多分、天ぷらにしたらうまいのではないでしょうか。我が家ではキスなら天ぷらにしてもいいけど、ハゼレベルだとわざわざ天ぷらの用意をするほどでも…という感じだったかどうかはわかりませんが、天ぷらでは食べたことはありませんでした。
針を深く飲み込むため、針外しを持たない子どもたちにとっては、釣果がボウズよりは嬉しいけれど、釣れれば釣れたで、少々やっかいな存在でした。
フナ
フナは食べませんでした。これと言った理由が見つからないのですが、あまり好きになれませんでした。レジャーフィシングの元祖的な魚だとは思うのですが…。
番外編
叔父の趣味が舟釣りで、近くの内湾ではアジやハチメ (メバル) をよく釣っていました。たまに連れて行ってもらえるのが楽しみでした。ある日の夕方時にたまたま叔父に会う機会があり、ふと釣りに行きたい気分だったので、せがんで連れて行ってもらったことがありました。
基本的に、夕方は釣れません。釣れないことが、おおよそ分かっていて釣り糸を垂らすので、なんというか、無になるのですが、あまり良い無ではありません。ですので、釣れないだろうけどなぁ…という雰囲気を叔父からは感じつつ、衝動的に釣りがしたい気分に襲われたため、せがんだ形でした。
堤防から50mほどですかね、近所の内湾では牡蠣の養殖のためにイカダがよく浮いており、その近くなら比較的、魚がいることが多いため、その辺で釣り糸を垂らしていました。
釣れないな―、釣れないな―、暗いし、暗い海ってこえーなー、無風だしなー、車もそれほど走ってねぇし、ほぼ無音だしなー、無だなー、という気分で1時間ほど経ったときでしょうか、エサ交換のために竿を上げてみると、やや重い感触がありました。
根掛かりの感触ではありませんでした。引きがほとんどないのですが、たまに、トントンとかすかな振動が手に伝わります。
カワハギの子どもがまたエサをつついてるのかな―とも思ったのですが、竿を上げても軽い重量感が持続するため、なにかが釣れてはいるようでした。
期待せずにリールを巻き、引き上げてみると、暗くてよく見えないのですが、棒状のものが釣れています。舟に上げたその姿に目を凝らすと、私はセグメンテーションフォルトに陥りました。
Credit: ズカンドットコム
エイリアンがいました。エイリアン2で見たあいつです (エイリアン2で好きな登場人物はビショップです)。このままでは内臓を食い破られ、また、卵も産み付けられる、そして、私の血を浴びた叔父も、口から入った血に含まれた卵が孵化してまた腹を食い破られるに違いないと恐怖したため、速攻でリリースしました。
未知の生命は宇宙から飛来し、海でじっと人類が衰退する、その時が来るのを待っているのだと思いました。
その他言いたいこと
近所の海は、波が穏やかな内湾ですので、海底は泥が多く謎の栄養質でした。
藻が多く生えているところで釣れるハチメ (メバル) は最高だと思っていましたし、今も思っています。 能登が地元の人間としてはノドグロなんて知りもしない魚でした。能登に来たらぜひハチメを食べてください。塩焼きがおススメです。
総括
雑魚でも結構美味しい。なんだかんだ言って、釣りに出かけた以上は釣れると嬉しいので、雑魚は癒し。ハンマーカンマーハンマーカンマー
それでは引き続き、釣り Advent Calendar 2017 をお楽しみに!次回は誰かな? adventar.org