チラウラヤーン3号

その辺のプログラマーのチラ裏です。

気づくと自分の作業は遅れを取っていた。石油川の護岸工事だ。遠隔操作用の機能だけでなく、機体には臭気センサーがついているため、神経系とシンクロしているせいで、石油の匂いに不慣れな自分はどうにも気分が悪くて捗らない。地球の方角は未だにすぐには分からない。方向音痴なのは火星に来ても同じだ。実際に火星に来ているのはテレイグジスタンス機体であって、生身の体は品川オフィスのリクライニングシートの上だが。

視界が全天球だと、半透明でモニターを重ねられていることを忘れがちになる。火星の夜はとても暗いので、モニターの輝度が眼精疲労から来る頭痛に響く。火星の土建屋になって3ヶ月が過ぎた。神経接続のなんとも言えない違和感 (血液にこんにゃく粉を入れられたような気持ち悪さがある) と歩行動作には慣れてきたが、物を上げ下ろしする動作の学習データがイマイチで、視界が頻繁に上下するのが悩ましい。来週、神経工学で評判のエンジニアが新しく整備班に入るらしい。臨床経験も豊富らしく、第2人工天体の建設では現場のケアに当たっていたという。

また頭痛がひどくなってきた。今日の作業は早めに切り上げて、端末遺伝子の調整も受けに行こう。

Garden On the Palm

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足が冷える。体を取り替えたい。